上村一昭(Kazuaki Uemura)弁護士
遺産相続のための「 エステートプラン 」について
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エステートプランを作成しないまま、私が亡くなった場合、どんな問題が家族に起こってしまうのでしょうか? |
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エステートプランとは、リビングトラスト*、遺言状、委任状、医療事前指示文書などを作成し、あなたが所有する財産の管理について指示を残すことです。家族間の揉め事や、相続手続きが長引くのを避けられるほか、不必要な出費や税金を負担せずにすむという利点があります。
もし事前にエステートプランを作成していなければ、あなたの死後、カリフォルニア州の法律の下、あなたの意思とは無関係に財産管理と遺産分配が行われることになります。これには相続人が未成年または管理能力のない場合に指名される後見人や管理人の決定と、プロベート** と呼ばれる裁判所による遺産の分配も含まれています。
実際に私が数年前に手がけたあるケースについてお話しましょう。その男性は生前にリビングトラストを作成していましたが、それは専門の弁護士によるものではなく、市販のソフトで作成したものでした(現在多くの方がインターネットなどで購入できる市販のソフトを利用していますが、場合によってはその内容が万全でないことがあるためお勧めできません)。
彼の残したリビングトラストには、自宅を含む財産を3人の子どもたちに均等に分配するように、と記されていましたが、ここで問題が発生してしまいました。1つは、自宅の名義をトラスト上に変更するという手続きを済ませていなかったばかりに、
プロベートが行われることになったこと。そしてもう1つの問題は、遺産相続人の1人である息子でした。財産は2人の娘と1人の息子に均等に分配されることになっていましたが、息子は40歳を超えても、読み書きもできず、高校生の頃から薬物常用者で、仕事にも就いていませんでした。プロベート終了後、彼は8万ドルの遺産を相続したのですが、ひと月も経たないうちに、酒と薬物ですべて使い果たし、姉の家に居候することになりました。
もし専門の弁護士がリビングトラストを作成していれば、まずプロベートの手続きを省略でき、さらにこの息子のためにトラストを設定して、1度に全ての遺産を渡さず、アパートの家賃と食費に十分な額だけを毎月支払うようにすることが可能だったのです。
このように、財産管理についてきちんとした知識がないばかりに、残された家族がトラブルに巻き込まれてしまうケースは少なくありません。
自分自身そして家族のために適切なエステートプランを立てていただきたいものです。
* リビングトラスト:財産管理を具体的に示した文書
** プロベート:総額財産が15万ドル以上または遺言状がない場合に裁判所が行う手続き
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「Advance Health Care Directive」について、詳しく教えてください |
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「Advance Health Care Directive」とは、医療に関する事前指示のことで、大きく分けて2つの目的があります。
第1の目的は、自分の代理人を任命することです。通常代理人には、配偶者や子供が選ばれることが多く、例えばあなたが交通事故に遭い、手術が必要であるにも関わらず意思決定ができない場合、代理人は以下のような権限において決定を下します。
1 身体または精神状態に関するあらゆる看護、治療、サービス、処置、診断などの医療行為の受け入れまたは拒否
2 医療従事者および医療施設の選択または変更
3 診断、検査、手術そして投薬プログラムなどの許可または拒否
4 人工栄養および水分の投与、保留、撤回、そして心肺蘇生術を含むすべてのヘルスケアにおける施術の決定
5 遺体からの臓器提供、死亡解剖の許可そして遺骨の処置などの決定第
2の目的は、回復の見込みがないと医師が判断した場合に、取るべき措置の指示を出すことです。例えばあなたが植物状態になりそれが続いたとします。このような場合、自然死を希望するのか、それとも再び意識を取り戻す可能性がなくても延命治療を希望するのか、またそのための看護や治療、サービス、処置などについて明確に指示するのです。
ここでアメリカの延命治療において、歴史に残る重要なケースをご紹介しましょう。1983年、当時25歳だったミズーリ州在住のナンシー・クルザンは、自動車事故のため意識不明のまま、病院に担ぎ込まれました。その後ナンシーは、4年以上にわたり、栄養チューブで生命を維持することになりました。数年後、ナンシーの両親は、彼女がそのような状態で生きることを望んでいないはずだと、栄養チューブを外すように病院に訴えたものの、病院側は治療を中止することを拒否。そこで両親は栄養チューブを外す許可を求めて訴えを起こしました。ケースはミズーリ州の裁判所を経て、連邦最高裁判所にまで進み、全米で大きな論争を巻き起こしました。結局さまざまな証言を通して、ナンシーが生命維持装置による延命を拒否していたことを示す十分な証拠をもとに、事故から約8年後、裁判所の判決でようやく栄養チューブは外されたのです。この事件を機に、カリフォルニア州をはじめ、その他の州の法律が改正されました。
「Advance Health Care Directive」は、エステートプランの最終段階で作成する文書ですが、病気や不意の事故などで起こりうるさまざまな問題に対処することができます。何よりも、医療に関する意思決定ができなくなった場合の不安を、大幅に軽減できる唯一の手段といえるでしょう。
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いずれ子供たちに自宅や債券などの財産を残したいのですが、口頭での遺産分配指示は可能でしょうか? |
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「通常、正式な遺言状がなく、さらに総額財産が15万ドル以上の場合は、裁判所がプロベートの手続きを行い、財産は法律によってしかるべき相続人に平等に分配されることになります。しかし実際には正式な遺言状を作成せずに、口頭で遺産分配の指示を行う方は少なくありません。法律的には、たとえ口頭の約束であっても、すべての相続人が遺産分配の内容に同意していれば問題ありません。しかし誰か1人でも反対すれば無効になってしまいます。
ここで私が過去に実際に手がけた口頭による遺産分配のケースをご紹介しましょう。女手ひとつで8人の子供たちを育てあげた女性が90歳で亡くなりました。全資産の価値は20万ドルほどで、彼女は常々「財産はそれぞれの子供たちに平等に残したいけれど、介護で苦労させた娘の1人が相続する割合は増やしたい」と話していましたが、正式な遺言状は作成していませんでした。その代わり、彼女はエステートプランとして自分の全財産を「ジョイント・テナンシー(合有財産)」に移して、その娘をもう1人の所有者にしていました。「ジョイント・テナンシー」という形態は、所有者の1人が死亡すると、生き残った方が自動的に全ての財産を受け取ることになります。つまり娘は遺産分配の権利をすべて握っていたわけです。
ところが母親が亡くなった後、8人兄弟姉妹の兄弟たちがこの事を知って異論を唱え始めました。彼らは姉が母親を騙して「ジョイントテナンシー」に移すようにした、と主張し、ついには裁判にまで発展してしまったのです。双方の弁護士が、互いに歩み寄るよう働きかけましたが、どちらも譲ろうとはしませんでした。
その結果、訴訟は1 年以上続き、私の弁護士費用は4万ドルにも上りました。さらに険悪な裁判の後、裁判官が下した判決は母親は遺産についての有効な指示を残さなかった。従って8人の子供の間で遺産を均等に分配すべきである≠ニいうものでした。つまり母親を介護するために、大きな犠牲を払った娘が優先されることはなかったのです。
このように、口頭での遺産分配指示は、たとえ家族間であってもさまざまなトラブルを引き起こすことが多くお勧めできません。また遺言状さえ作成すれば、遺産相続の心配はないと考える方も多いのですが、実は遺言状の執行にはプロベートの手続きが必要となり費用も時間もかかります。死亡後の遺産相続を円滑に行うためにも、遺言状を含めたエステートプランを作成することをお勧めします。
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長かった駐在生活が終わり、日本に帰国することになりました。10年前に購入した自宅は売らずに人に貸す予定ですが、帰国前にエステートプランを作成したほうが良いでしょうか?ちなみに2人の子供たちはすでに成人しており、それぞれテキサス州とニューヨーク州に在住しています。 |
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帰国に際し、資産をどうするべきかというご相談をよく頂きます。まずアメリカ国内に家などの資産を持っている方は、たとえご自身がアメリカに住んでいなくても、エステートプランを作成しておくべきでしょう。その理由は、あなたの居住場所にかかわらず、代わりに資産を管理する人が必要だからです。
またこれらの資産の相続についても検討しなければなりません。もしあなたが亡くなった場合、「リビングトラスト*」がなければ、ご自宅を含む資産は、プロベート** に入ることになります。相続人である2人のお子さんは、弁護士や裁判所に予想外のお金と時間を費やすことになりかねないのです。
エステートプランで作成する文書には「リビングトラスト」「遺言状」「委任状」「医療指示書(医療に関する意思決定を示した文書)」などがあり、各文書の作成には1週間ほどかかります。ただし資産の名義変更や、相続税または贈与税のための信託設立などが必要な場合は、作成文書および期間は異なります。
* リビングトラスト:財産管理を具体的に示した文書
** プロベート:総額財産が15万ドル以上または遺言状がない場合に裁判所が行う手続き
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50代の男性です。自宅と貯金があるのですが、独身で子供もいないため、エステートプランを作る際、相続人には誰を指名したら良いのでしょうか?父母ともにすでに数年前に他界し、兄弟もおりません。 |
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独身でお子さんがおらず、またお身内の方が亡くなっている場合でも、やはり「リビングトラスト」を作成しておく必要があります。資産は近しい友人や教会、学校などに寄付することが可能ですが、このまま何の準備もなければ、カリフォルニア州の法律により、あなたが亡くなった後、資産は近親者にわたることになります。通常はご両親、伴侶、子供または兄弟姉妹の順で、さらに甥や姪がいなければ、遠い近親者となります。
もし裁判所に該当する近親者の申請がなければ、あなたの資産は該当者が現れるまでカリフォルニア州が保管することになります。あなたの希望通りに資産管理または贈与できるように、できるだけ早く専門の弁護士に相談してください。
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