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文: 杉浦(岩城)尚子(日本、ニューヨーク州弁護士)

日本にいる年老いた親が心配…。@

日本にいる親(親族)の成年後見(法定後見)制度について

Question

 日本においてきた父が高齢になりアルツハイマーを発症し、私はアメリカ、親族も遠方に暮らしています。父の財産管理を支援してもらえる公的な制度はありますか。

Answer

 日本の家庭裁判所(家裁)を通じて行う成年後見制度(法定後見または任意後見)を利用できます。法定後見では、親族等が家裁に申立てをし、家裁から派遣される調査官と医師が本人と面接をして生活状況や判断能力を調査し、父親の判断能力に合わせた適切なレベルの援助と後見人等を選任します。この家裁の審判は登記されるので、父親の後見人等は登記のコピーを示して父親のために財産管理等の行動をします。
 この制度は、認知症(アルツハイマー型、パーキンソン型など)、知的障害、精神障害など精神上の障害がある人を対象としており、身体上の障害があっても頭がしっかりしている人は利用できません。在宅介護を受けている方も、老人施設等への入所者も利用できます。
 なお、任意後見は本人がしっかりしているうちに将来的に認知症になった場合に備えて後見についての私的な契約を結ぶものですが、これについては改めて紹介し、今回は法定後見に絞って説明をします。

Question

 母は日本で1人暮らしており日常生活には問題ないのですが、最近は物忘れなどが増え、母が父から相続した不動産や預貯金などの財産の管理をできるか、詐欺的な投資勧誘等に引っかからないか心配です。

Answer

 この場合、3段階ある成年後見制度のうち、「補助人」か「保佐人」を選任する審判を受けることが考えられます。成年後見制度の中でも本人の判断能力の程度によって、どのように成年後見制度を利用するかが異なり、次の表の@からBに大別されます。これは、本人の能力に応じて可能な限り自己決定を尊重し、残存能力を活用するという成年後見制度の理念に基づきます。なお、@からBのいずれにあたるかは、本人と面接をした医師、調査官の調査を基礎に裁判官が審判します。

「補助人」、「保佐人」、「後見人」による支援の違い

@

本人の判断能力が不十分である場合(以前と比べて忘れっぽくなってきた) 

補助人

民法第13条1項規定の事由につき同意権・取消権、家裁が指定した事項につき代理権(但し、本人の同意要)

A

本人の判断能力を著しく欠く場合(忘れるときがだいぶ増えてきたが、しっかりしているときもある)                    

保佐人 

民法第13条1項規定の一部の事項につき同意権・取消権(但し、代理権は同上)

B

本人の判断能力を欠く常況にある場合(しっかりしているときが殆どない)

後見人 

本人の財産に関する法律行為への代理権(本人の同意不要)、財産管理(財産管理権)、取消権、本人の身上への配慮

*民法13条1項の規定例:借金、不動産の売買等、訴訟行為、相続の承認や放棄、新築、改築、増築をすることなど

 たとえば母親が騙されて、保佐人の同意なく必要もない家の改築をする契約書にサインをしたとしても、保佐人は後にこれを取り消すことができます。

Question

 アルツハイマーを発症した父は在宅介護を受け、家裁を通じてすでに後見人を選任しています。今後症状が悪化していった場合、後見人はどのようなことをしてくれるのでしょうか。

Answer

 後見人の仕事には、身上監護と財産管理があります。身上監護は、たとえば在宅の介護 のサービスに関する契約、老人施設に入所する際の各種契約、入通院に際する医療機関との契約等の本人の身上面での法律行為を行うことです。
 成年後見人が介護の専門家でない場合は、介護支援専門員(ケアマネージャー)などと連携をとりながら、必要な介護内容、施設入所の是非などを決定します。後見人は、本人の心身や生活状況に配慮し、本人の意思を尊重しつつこれらを決定します(民法858条)。たとえば、後見人は、本人を代理して本人の持家を売却し(家裁の許可要)、他方で有料老人ホームなどの入所契約を結び(家裁への報告要)、持家の売却代金を入所費用として支払うことも出来ます。

Question

  どのような人や機関が後見人等(後見人、保佐人、補助人を含めて「後見人等」といいます)となるのですか。

Answer

 親族、社会福祉士・弁護士・司法書士などの職業後見人、また、社会福祉協議会、社団法人、株式会社、 NPO 法人などの法人です。
 また、前述のうち複数が共同後見人等となることも可能です。

Question

  後見人等への費用、また、家裁への申立費用は ?

Answer

 親族を後見人等とした場合には無償とする場合もあります。親族以外の職業後見人等への費用は、作業内容ごとに加算されることもありますが、基本的な財産管理への標準報酬料は月3万円以上くらいが目安です。
 家裁への申立費用と後見の登記費用で約5000円、医師への鑑定費(通常10万円以下)、そのほか戸籍等の必要な書類取得手数料等が必要です。(2006年9月現在)

Question

 後見人等を選任する期間はどのくらいかかりますか。

Answer

 事例によりますが、4か月程度が目安となります。

以上は一般理論に基づくもので、個々のケースに対する法律アドバイスを目的としたものではありません。

虎ノ門総合法律事務所
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