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文:杉浦(岩城)尚子(日本、ニューヨーク州弁護士)

米銀行預金口座の相続手続きは?

Question

ロサンゼルス赴任中に現地で開設した銀行口座を、帰国後も維持しようと思います。私の死後、この口座内の預金の相続手続はどうなりますか。私は、日本で一生暮らす予定で、私を含め相続人はみな日本国籍です。また遺産分割についての争いはなく、法定相続分に応じた分割になると思われます。

Answer

アメリカに預金口座がある場合、その清算(預金の払戻と日本への送金)の手続きは、遺産のある州の法律によることになります。アメリカでは相続の手続きを@遺産の管理・清算と、A分配・移転の2段階に分け、@の段階では遺産の所在地の法律を適用することになります。Aの段階の場合、動産か不動産かによって取り扱いが異なります(ちなみに日本では相続の手続きを@Aの段階に分けることはありません)。

 設問と類似する事例としてこのようなケースがありました。加州内に合計10万ドル以上の財産を持つ方が亡くなった後、彼の遺産は同州のプロベートに関する法律(プロベートコード)によって、州裁判所での遺産の清算(プロベート)の手続きを行うことになりました。つまり加州の弁護士と日本の弁護士が協働して、プロベート申立ての準備を行い、同ケースを通じて遺産管理人を選任し、同人が裁判所の審決に基づき、預金の払戻しと日本への送金の手続きを行ったのです。

 他の類似事例では、日系の米銀における預金額が少なかったことも手伝い、例外的に日本での取り扱いとほぼ同様に、すなわち口座名義人(故人)の相続人全員の署名、押印を備えた払い戻しの申請書などの書類を提出することで、払い戻しを認めた例もあります。

 日本への送金後は、日本の法律に基づき、法定相続分どおり各相続人の間で預金を分割することになります。

Question

仮に、私の遺産(日本にある遺産と加州の預金)の分割についての遺産分割調停(または遺産分割審判)を日本の裁判所で行った場合、アメリカの銀行は日本の裁判所の判断に応じて、預金を払い戻し日本に送金してくれますか。

Answer

これについては、明確な回答はなく実際は各銀行の判断によることになります。銀行が、口座のある外国の裁判所の判断をどこまで重んじるかという問題です。したがって、日本での遺産分割調書や審判書に基づく払い戻しが可能かどうか、事前に銀行に問い合わせることになります。

仮に回答が拒否された場合には、前項のように、遺産所在地である加州の法に基づく清算手続きが必要とされ、加州の裁判所でのプロベートの手続きを経ることが要求されることもあります。

Question

私が日本語で、日本において作成し、日本法に基づく要件を備え、日本の家庭裁判所で*検認審判を得た遺言で指定した遺言執行人が、加州の預金の払い戻し、清算を行う場合は、その遺言書に基づいて預金の払い戻しや日本への送金をしてくれますか。

Answer

結論的には各銀行の取り扱い次第となります。 ある文献では、ニューヨーク州の預金について、日本の裁判所の遺言の検認審判書とその英訳文を提出することにより、預金の払い戻しが受けられた事例と、逆に加州の預金について、現地の遺産管理人の選任が必要となった事例が報告されています。

*検認とは家庭裁判所において、相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせ、遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止することを目的とした手続きです。検認は、公正証書で作成した以外の遺言、つまり自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合に必要とされる遺言の形式検査(内容には触れない)です。アメリカでは日本の検認に相当する手続はありません。

以上は一般理論に基づくもので、個々のケースに対する法律アドバイスを目的としたものではありません。

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